【ビザについて知ろうシリーズ①】技術・人文知識・国際業務ビザ

2020.7.2最終更新
外国人留学生の就職活動
日本で学生生活を終えて、そのまま日本で就職する場合、多くの方は「技術・人文知識・国際業務ビザ」を取得して働きます。民間企業で社員として働く場合はこのビザになることが多いので、取り上げて詳しくみてみましょう。

1、外国人の有するビザの割合

令和元年末の在留外国人数は,約293万人です。そのうち、中長期在留者数は約262万人です。
その内訳は、下記の通りです。

(1) 永住者 793,164人 (構成比27.0%) 
(2) 技能実習 410,972人 (構成比14.0%) 
(3) 留学 345,791人 (構成比11.8%) 
(4) 特別永住者 312,501人 (構成比10.7%) 
(5) 技術・人文知識・国際業務  271,999人 (構成比9.3%) 

上記の通り、一定の範囲内の職種、業種、勤務内容に限って就労が可能な在留資格のうち、技能実習を除くと、多くの方が技術・人文知識・国際業務ビザで働いています。
日本への留学生のうち、卒業後日本国内で就職するのは、約3~4割です。その内の大半の外国人の方は技術・人文知識・国際業務ビザで働くこととなります。

2、技術・人文知識・国際業務ビザの定義

「技術・人文知識・国際業務」ビザの定義ですが、
「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」
となっています。他の在留資格に比べて、適用される職種が多い半面、判断に迷う部分もあります。
法務省では、典型的な例を公表しています。

http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukan69.html

例えば、
・母国において工学を専攻して大学を卒業し、ソフトウェア会社に勤務した後、日本のソフトウェア会社で、月額約35万円の報酬を受けて、ソフトウェアエンジニアとしてコンピュータ関連サービスに従事するもの。
・経営学を専攻して日本の大学を卒業し、日本の航空会社に就職し、月額約25万円の報酬を受けて,国際線の客室乗務員として働き、また乗客に対する母国語、英語、日本語を使用した通訳・案内等を行い、社員研修等において語学指導などの業務に従事するもの。
などです。

日本に留学をしている学生が技術・人文知識・国際業務ビザを取る上で大切なことは、
「学校の専攻分野」「(+母国での前職種)」 ⇔ 「従事職種」
上記相互に関連性があることです。
例えば、経済学を学んでいた学生が、機械設計に携わるエンジニア職に就く、というのはビザをもらうことは難しくなります。

3、技術・人文知識・国際業務ビザでは取得が難しい職種

技術・人文知識・国際業務ビザの典型例は法務省が提示していますが、それでも従事職種は多種多様なもの。それでは知っておきたいのは、どのような職種だと上記のビザに当てはまらないか、です。
まず初めに、技術・人文知識・国際業務ビザの申請書ですが、職務内容の部分は選択式です。そして、その選択式というのは下記です。

(2)「技術・人文知識・国際業務」での在留を希望する場合
技術開発 【②農林水産分野 ③食品分野 ④機械器具分野 ⑤その他製造分野( )】
生産管理 【 ⑥食品分野 ⑦機械器具分野 ⑧その他製造分野( )】
⑨管理業務(経営者を除く) ⑩調査研究 ⑪情報処理・通信技術 ⑫CADオペレーション
⑬翻訳・通訳 ⑭海外取引業務 ⑮コピーライティング ⑯報道 ⑰編集
⑱デザイン ⑲企画事務(マーケティング,リサーチ) ⑳企画事務(広報・宣伝)
㉑法人営業 ㉒金融・保険 ㉓建築・土木・測量技術
㉔教育(教育機関以外) ㉕法律関係業務 ㉖会計事務 ㉗その他( )

上記を見てわかるように、
小売業の接客・販売や、飲食業の調理・接客給仕、製造業の工場勤務や、物流業のドライバーなどは当てはまりません。

小売業や外食業でも、規模の大きな会社や、外国人採用実績が豊富で、将来的に管理業務や海外取引業務、法人営業などに従事する約束が明確であるような会社は、ビザがおりるかもしれません。
しかし、特定技能ができてから、外食産業での技人国ビザの取得はかなり難しくなったと言われています。

また、幹部候補生として将来の企業を担ってほしい、もしくは将来海外展開を考えて、その方を海外の責任者にしたい、という採用で、すべての業務を覚える為に研修として、販売や店舗での接客、工場勤務をさせる場合もあるでしょう。
その場合は、入管へ申請する際に、きちんと計画と期日を示さなければなりません。そうはいっても、ある程度の会社規模や、実現性、これまでの実績や現存する外国人の従業員の現状も視野に入れて審査されますので、必ず許可されるわけではありません。
また、外国人採用が初めての会社の場合は、入社する本人からも、申請書類に研修に関する説明を入れなければならない旨を会社に伝えた方が良いでしょう。